この年の夏に登山を始めて、最初の冬が訪れた。
そうなれば当然、雪山登山を始めることになるわけだが、その最初の山をどこにするかは悩んだ。
まだ登ったことがない山で雪山デビューをするのは心許ない感じがしたため、夏に一度歩いていて勝手知ったる八ヶ岳を選んだ。
同じ山でも、季節が違えばここまで山の表情や難易度が違うのだと感心しながら登る。
冬の山はとにかく寒く厳しい。しかし天気が良ければそれだけの見返りがある、人を惹き込む魅力があった。
標高を上げて稜線が見えてくると、圧巻の光景が目に飛び込んでくる。
降雪直後ということもあって、山は白銀に輝いていた。
行者小屋に宿泊する。
朝晩は一段と冷え込み、小屋内のストーブと毛布が友達だった。
まだ自分には冬のテント泊なんて考えられない。
文三郎尾根から赤岳を目指す。
頂上直下だけは傾斜がきつい岩稜となっており、雪と岩のミックスで緊張を強いられる。
登りはあまり気にすることはないが、下りは足の置き場を考えながら足を動かしていく必要がある。
冬の赤岳登頂。夏に崩壊していた山頂標識は真新しくなっている。
それにしても、成層圏にいると勘違いしてしまいそうな、信じられないほど濃い青空。
よっぽど空気が澄んでいるのだろう。
権現岳と奥には南アルプスが見える。
冬山の現実離れしたような景色は圧巻だ。
再び行者小屋に戻ってくると、テント泊していた登山者が撤収作業をしていた。
雪の中のテント泊はめちゃくちゃ寒いだろうが、とはいえこの日は天気が良く風も穏やかで、コンディションとしては抜群だろう。
赤岳からはお隣の阿弥陀岳がよく見える。
そして、遠くに見えている御嶽山や北アルプスも美しい。
特に北アルプスの雪の量は、ここから見ても凄まじい。白さのレベルが違うのがわかる。
それにしても、真冬にこれだけ北アルプスの山々が晴れているのは珍しいのではないか。
積雪が多いということは、それだけ冬の天候が厳しいということを意味しているわけなので。
下山途中に見える阿弥陀岳の山容。
このアングルの阿弥陀岳はものすごい角度がついていて、聳え立っている感じがすごい。
赤岳からお隣の山として眺めるよりも荘厳な雰囲気がある。
無事に美濃戸まで戻ってきた。
人生初の雪山登山は不安も多かったが、結局は天気に味方され、冬山登山の醍醐味を存分に味わうことができた。